スティックPCなんて単語、久し振りに聞いた
先日、10年前のスティックPCが発掘された、みたいな話が記事にあったのを見たんですよ。
https://www.gdm.or.jp/crew/2025/0705/594846
スティックPC!?
随分と懐かしい響きです。10年前に出回ってた記憶は確かにあります。今でも極稀に見ることはありますが。
そこで今回は、スティックPCについて語ろうと思います。私の憶測交じりではありますが、お付き合いいただければ。
・そもそもスティックPCってなんよ
今から20年以上前に、ネットブックというのが流行ったのを知っている方も多いでしょう。「ネットさえ出来れば良い」みたいな感じで、最低限の性能とブラウジング出来るだけのモニタを積んだ、パソコンというのもおこがましい産業廃棄物ミニマムで安価なものが持て囃された時代がありました。
ネットブック自体は00年代中盤から10年代中盤に最もその勢力を広げましたが、最近は退潮気味……なんてことはなく、N100とか積んだノートが安価かつそれなりってことで、一時期盛り上がってましたよね。結局あれどうなったんだろう。
まあそんなネットブックが捨て値で売られていた時代、積まれていたCPUというのはAtomが定番だったと記憶するのは私だけではないでしょう。
Atom……気がついたら名前が抹殺されてCeleronやPentiumを詐称僭称した挙句、最後は全員仲良くブランド消滅と相成ったAtom君……まあそんなことはどうでもいいこと。
最近全く聞かなくなった*1Atom君ですが、圧倒的な省電力性と引換えの、この世の終わりみたいな性能で悪名高く、名前を聞くだけで蕁麻疹の出る方も多いでしょう。私は窓から投げ捨てたくなる衝動に駆られます。
まあそんなAtomだからこそ、安価で長時間使うことを想定したネットブックに採用されたわけですが、多分どこかにいたのでしょう。
「もっと小さく出来るんじゃね?」
とか考えてたやつが。
確かに画面もキーボードも無くせば、コンパクトになるでしょう。持ち運びも大変楽。だからといってUSBメモリとタメ張れるレベルまでするのはどうかと思いますが。
だってこれ、手の中にすっぽり収まるんですよ。小さいってレベルではない。
こういう「小型・軽量・一応パソコン」が、スティックPCの魅力というか売りだったはず。
その小さい筐体に収めるために、ありとあらゆる努力が払われており、大体CPUはまずもってAtom、メモリは2〜4GB、ストレージはeMMCの32GB〜64GBと、もう何もかも最低限。潔いといえば聞こえは良いですが……。
それでいて売値は1万を切るモデルすらあったのですから、当時は今と比べて円高とはいえ、狂った価格設定でしたね。
……今でも2〜3万出せば末端のパソコンは買えることを考えると、そこまででもないか……?
・何に使えたんだこれ
言ってしまえばネットブックの延長であり、極限まで無駄*2を削いだミニマムボディを持ったスティックPCですが、そもそも何に使えたんだろうと。
そんなの決まってます。ネットサーフィンするため。
というかそれ以外に使い道が無い。
「表計算とかどうよ」とか言う人に言っときますが、今時のExcel君は第8世代Core i3&メモリ8GB(但しストレージはHDD)のPCでさえ落ちる時がある代物。*3とても怖くて使えません。まあ当時はどうかはわかりませんが。
あとは、腐っても一応パソコンであり、Windowsを積んでいるため、操作感はパソコンまんまです。
テレビの裏に繋いで、ワイヤレスキーボードとマウスで動画三昧!とか当時は流行ったことでしょう。
実際、様々なところでバカスカ売られており、ドスパラでも売ってたところを鑑みるに、2010年代中盤にはそこそこメジャーなジャンルだったと思います。
・今ほとんど見ないけどどこ言っちゃったの?
2025年現在、一般人向けに売られているスティックPCは皆無と言って差し支え無いでしょう。
Amazonでわざわざ探さない限り、スティックPCは最早買うことすらままならない、絶滅危惧種と化しています。
こうなった理由として挙げられるのは
というのが挙げられると思います。
1は、単純に携帯デバイスとして最早生活必需品となったスマートフォンが、パソコンやゲーム機などを代替し始めたこと。また、それに耐えうるだけの性能の強化がされたことです。
今のスマホって何でもできます。電話、ネットサーフィン、ゲーム、映画視聴、撮影、それどころか動画編集すら、手のひらに乗っかるサイズの板切れで出来るわけで。
ディスプレイもカメラも付いているとなると、自己完結性に優れているというわけであり、今の時代スマホ1台あればとりあえず何とかなる時代。
……そう、自己完結性です。スティックPCにそんなものあったっけ?
ところでノートパソコンって……。
2に関しては、そもそもスティックPCありきで出来たことが、無くても出来るようになってしまったこと。
スマホの普及でネットサーフィンは手元で楽々。でも映画は大画面で楽しみたいよね!
そんなスティックPCの活路を粉砕するのは、デジタル家電なテレビの皆様方。ネットに繋いで映画やドラマはサブスクで見放題。元々無くても、Google CastやFire TVを買ってきて繋げれば一撃です。
実際、私は部屋のテレビにFire TV繋げて、アマプラやDisney+を楽しんでいるわけです。出先だったらスマホ片手に。家ではテレビで大画面。黄金コンビです。
……そう考えると結構中途半端では無いでしょうか、スティックPC。
3はもうあれです。ついさっき出したN100とかを積んだ、スティックPCより圧倒的に拡張性のあるミニPCが跳梁跋扈し始めたこと。
SATAのSSDを増設出来るだとか、フルサイズPCにも太刀打ち出来るとか、M.2を何本も積めるとか、スティックPCの「SDカードでストレージ増設!」が可愛く見える拡張性の良さは、余裕のあることも暗に示しており、そのあまりの筐体の小ささから余裕なぞ何処にもないスティックPCをねじ切るのに苦労はしないでしょう。
4は身も蓋もありません。
一般層からすれば、別に使い勝手が良い訳では無い。
持ち歩くにしても、ディスプレイが無ければ機能せず、キーボードとマウスも持ち歩かないといけない。外部電力も必須。
……ノートパソコンって、ちゃんとディスプレイ付いてるし、キーボードもスピーカもあるし、拡張性もまあまああるし、バッテリーも当然搭載。完全に自己完結しています。
ってことはさ……ノートで良くね???
と、一般層が正気を取り戻したのかどうかはわかりませんが、何にせよそもそも存在意義が希薄だったことがバレてしまったが故に、今ではジャンルごと衰退してしまったのではないでしょうか。
・結局時代の風雲児に過ぎなかったのか?
まあ色々ケチつけてきましたが、用途を限れば有用なものであることは間違いないと思います。
Windowsを積んでいる機種であれば、操作感はパソコンまんまというのは先に触れた通り。つまり、膨大なWindowsの資産をそのまま流用出来るということ。
手軽に設営できる、デジタルサイネージ端末としての活路は、今でもあるのではないでしょうか。
あとはターミナルとか……。
……RaspberryPiとかあるだろうって?
あれはARM系CPUを積んでいるから、正直言ってソフトウェア資産を使うには少々微妙ではないか……と、素人は喋っときます。
まあ色々言いましたが、私が10年前にスティックPCを見た時、得も言われぬ高揚感があったのは事実で「パソコンの未来は明るい!」とか無邪気に信じたものです。
さて……

………こんな記事書いてるってことはさ、
買ってるんだよなぁ!
というわけで、次回をお楽しみに……。